何が書けるのか

遺言書作成に際し、事前に知っておかねばならないポイントとして、果たして何が書けるのか、どこまでが有効な内容として没後実践されるのか、これらが見逃せません。綴られた内容が遺言書としての効力範疇外の希望であれば、単なる無意味な書面と化してしまい、これでは意味がありません。ちなみに遺言書で法的効力を有する項目は限定されていて、正式には「遺言事項」と称されています。

まずは相続に関する内容、すなわち相続人に自身の財産を分与する意志を伝える内容です。具体的には法定相続分には基づかず、自身の希望に沿った分与の実践、あるいは特定の法定相続人を廃除する、もしくは廃除を取り消す以降もこれに含まれます。次に財産を遺贈する意向に関する内容で、これが遺言書の中心となります。そして最後に身分に関する内容で、こちらは多岐に亘ります。例を挙げれば婚姻届未提出の相手との間に出来た子供の認知に関して、子供が未成年時の後見人を指定するなど、対特定の人物に関する内容です。

その他法的な効力こそありませんが、付言事項として言い残しておきたいメッセージも記載が可能です。財産分与に際して発生のリスクが避けられぬ親族間の争いを未然に防ぐ効果が期待出来、こうした懸念が避けられぬ方々であれば、綴っておいた方が良いでしょう。

いつ作成すべきか

遺言書のイメージとして、命が潰える直前に震える手で認める、あるいは看取る家族が一生懸命聴き取って書き遺す、そんなイメージが拭えませんが、これは大きな間違いです。またご自身がしっかりされている間、寿命が残りすくない時期を迎えてから作成すれば大丈夫とお考えの方々もおられますが、これも正しい判断とは言い切れません。

考えたくはありませんが、不慮の事故に遭遇する、突然の重大な疾病の発病に襲われるなど、私達の生命が抱えるリスクは、必ずしも年齢だけと関係性を有している訳ではありません。極端な話、今この瞬間に作成から準備しておいても早過ぎない重要な効力を有する書面、それが遺言書なのです。

何より私達にとって避けられぬ「老い」は、正常な判断力や的確な意志表示に大きな障害をもたらします。痴呆と称されるこの症状故、ご自身の財産分与の意向を正しく伝えられないとなれば、悔やんでも悔やみ切れぬのみならず、その心中を看護するご家族が気づく事も叶いません。心身健全でご自身の意思を明確に第三者に伝えられるうちに作成すべきなのが、遺言書なる「伝えたい伝えるべき人達へのラストメッセージ」なのです。ちなみに一旦作成した遺言書は半永久的な効力を有する訳では無く、複数回の最新版への修正や再作成が可能です。

作成すべき方々とは

自らが築いた財産の分与に関しては、自身の意思を反映させたいとお考えの皆様には、遺言書の作成が不可欠と言っても過言ではありません。財産分与に関しては法定相続分なる法律に基づいた分配基準が存在しますが、無条件でこれに基づく分与とはせず、遺言書に記したご自身の希望に沿った分与が優先されます。

またお子様がおられぬご夫婦で、妻に全財産を分与したい場合にも遺言書が不可欠です。法定相続では1/4がご自身すなわち夫の兄弟に与えられますが、兄弟には遺留分は存在しません。遺言書に生前の意思を明記する事でこの希望が叶えられます。

あるいはご自身が世襲制の自営業主で、残された後継ぎのお子様に分与する事を通じ、自業の金銭面の弱体化を防ぎたい方、また相続人間の人間関係が悪化しており、没後のトラブルが避けられぬと判断されている方々にとっても、遺言書の効力が相続の大きな助けとなります

その他生前お世話になった、相続人以外の人物に分与したい場合にも、遺言書への明記が欠かせません。法定相続に基づく分与となれば、希望される相手の手に渡る事は叶いません。このようにご自身の意向を明確にお持ちであれば、所定の作成手順を踏んだ有効な遺言書の作成から保管を通じ、ご自身が他界された後に確実に実践される環境を整えておきましょう。